熊本県の球磨川にある県営荒瀬ダムが撤去されることなったとの発表がありました。撤去工事開始は2012年度。
球磨川といえば、最上川・富士川と並ぶ日本三大急流の一つとしてその名が知られていますが、最近では支流の川辺川の方が有名になってしまったかもしれません。民主党政権発足直後、群馬の八ッ場ダムと共に川辺川ダムの問題が連日新聞テレビを賑わせていましたから。
http://ja.wikipedia.org/wiki/川辺川ダム 川辺川ダムの当初の完成目標は1976年(昭和51年)だったようで、反対運動の歴史はなんと40年以上にもなるそうです。
それはさておき、 とりあえず、ウィキペディアの球磨川と荒瀬ダムの項。
http://ja.wikipedia.org/wiki/球磨川 http://ja.wikipedia.org/wiki/荒瀬ダム 球磨川河口付近の干潟は日本の重要湿地500に選ばれていて、重要野鳥生息地(IBA)に指定されているそうです。また、荒瀬ダムの魚道には観察施設があるそうです。
で、この球磨川本流にある荒瀬ダムが紆余曲折を経て撤去されることになった、と。
ニュース記事は、たとえば以下など。
http://news.goo.ne.jp/article/nishinippon/politics/20100203_evn_003-nnp.html http://www.asahi.com/politics/update/0203/SEB201002030004.html 撤去の理由のひとつに3月末で迎える水利権の失効が関係していますが、失効後はダム全体が河川に作られた「違法な工作物」ということになるため、法的意味合いにおいてきっちりとっぱらう必要が出てきます。
が、一口にとっぱらうといっても、記事に「日本国内においてダム撤去は前例がないため、撤去工法、環境対策など様々な面から注目されている」とあるように、日本が全くの未体験ゾーンへの突入するわけですから、いったいどんなことになるのか非常に興味深いところです。
ちょっと調べてみたところ、平成18年2月付けの「荒瀬ダム撤去方針に関する地元説明会」
の資料がネット上にありました。
http://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/1166.pdf 前知事時代に一旦決まりかけた撤去話のときのものですが、今回の決定でも、撤去方針や工法に大きな変更はないだろうと思います。
5年がかり。シルトの全量除去、土砂処理、希少生物の移植、環境のモニタリング。
いやぁ、たいへんですね。
1955年のダム完成以来半世紀にわたって形成された止水域の生態系を破壊することになりますので、路頭に迷ったり行き倒れたりする生き物も多く出るだろうと思います。
派生的な影響もずいぶん出てくるでしょう。ダム下流や河口周辺の海へのインパクトも大きいでしょうし、撤去工事終了後もなんだかんだとその余波が長期にわたって続くと想像されます。
希少種についてはダム撤去前に生息適地に移植するということですが、これ、考えてみればなかなか面白い話ですね。環境破壊の象徴のようなダムというものがあったからこそ、そこに生息できていた希少種ですので、そいつらとしてはダムの撤去こそ生息環境を破壊する行為だべ、ってことになりますので。
多くのダムが寿命を迎えつつある時代となったと共にダム不要論も強く、今後は荒瀬ダムのように撤去されるものも増えてくるでしょう。
数十年以上もの年月を経て原状復帰する工事が行われる場合、環境破壊と逆であるはずの原状回復という行為が希少種の生き延びる環境を奪うことになります。となりますと、希少種を保護すべしと主張する自然保護団体の悩む場面が多くなるかもしれません。
対する役所側はどうかといえば、工事予定域に希少種が確認されたならば「とりあえず移植するのが安上がりなんちゃうん」みたいなやり方で保護したことにする例がこれまでも多かったわけですので、特に頭を悩ませるようなことはないのかもしれません。そもそも「違法な工作物」を撤去するという、正義の公共事業をやるだけのわけですし。
とまあ、いろんな意味で今後に注目です。
ふるさとの自然を子供や孫たちに伝えたいと考える人々がどう思っているのかも、ちょっと気になります。特に、ものごころついた時にはすでにダムがあり、ダムのある川で遊んで育ったという人たちの。
posted by biobio at 17:18
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