魚類の採集方法は目的により様々です。特別な許可が必要となったり、業務によっては方法が細かく指定されていたりします。
漁業で用いられる方法と同じものもあれば、魚類調査ならではの方法もあります。魚道調査等では現場の状況に応じた採集器具を作成する必要があったりします。
ここでは、ごくおおまかにどんな方法があるかをリストアップします。個々の方法に関する詳細は別エントリで。
なお、仔魚や卵は調査対象や現場の事情しだいで様々な工夫が必要になる場合が多いようです。
【網類を用いる方法】−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●ひき網
船びきと地びきがあります。
表層引き、底引きなど、引く層で捕れるものがかわる場合がほとんどです。
底引きの場合、思わぬ鬱陶しいものがとれることがあります。
ドレッジなどもこの類。
●刺網・流し網
目的に応じて目合いの違う網を重ねる場合もあります。
刺し網は固定して使うものの他、投げ網もあり。
時間を置きすぎると死にます。また、網からはずす時のダメージが少なくありません。
●まき網・敷き網
普通海で行われる漁法ですが、四つ手網も敷き網の一種。湖沼や水路等で便利に使えます。そこそこおおがかりになってしまうのが難。
●定置網
大型のものから小型のものまで各種あります。現場の状況に応じて特注品が必要になることもあるでしょう。
川の場合、入り口は下流側。
カメが入る可能性のある場所は、袋網の一部を水面上に出しておく必要があります。溺れて死にます。
ついでながら、定置網を陸上に張っておくとネコが捕れます。
●投網
目合いや沈子の重さ、現場の状況や技術で成果が大きく左右されます。
川底に網がひっかかりやすい条件の場合、ほとんど役にたちません。
ひとによっては、丸、三角、四角、と自由な形に投げることができます。
川で使うものは比較的小さく投げやすいように作られていますが、湖沼で使われるものは大型で重くなります。袋網がついていないものもあり、この場合はリング上のおもりを上から沈めて寄せた網が開かないようにします。
河川の調査で、一地点何回と調査方法に定められていたりすることがよくありますが、定量性に期待する方がどうかしています。
目合いと対象魚種の関係によっては、刺し網と同じく採集個体へのダメージが大きくなります。
●たも網、さで網
河川や湖沼の岸辺で威力を発揮します。蹴り込みやすくいとりが主な使用法ですが、かぶせて使うと効果的な場合もあります。
小型のたも網といってもいい、えびたもやかにたもも、特にハゼ類の採集に重宝します。
なお、たも網は両生類、爬虫類、トンボ採りにも威力を発揮します。
●稚魚ネット、プランクトンネット
浮遊生活を送っている仔稚魚や浮遊卵は、そこにいればこれで採れます。普通、船・ボートが必要。当然、目的によって目合いや曳航速度を選ぶ必要があります。
【トラップ類を用いる方法】−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●せん漁業
かごや筒を使用して獲る漁法。
もんどり、セルびん、カニかご等。餌を入れる場合と入れない場合があります。川や湖沼で便利。
【その他の採集法】−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●釣り・延縄
釣りは漁獲努力面での評価がしずらいという難点があります。
はえ縄は模型船でひかせる(沖へのばす)という手もあります。
●空釣り漁業
空針にひっかけて獲る方法です。
●刺突漁業
もりやヤス等で突き刺して獲る方法です。箱眼鏡があると便利。
●鉤引漁業(こういんぎょぎょう)
ウナギ鎌など。
●挟捩漁業(きょうれいぎょぎょう)
ウナギはさみなど。
●掻剥漁業(そうはくぎょぎょう)
水底または砂泥中をかき起こして、貝類等を捕獲します。
●採泥器による方法
シジミなどは採泥器でも採れないことはありません。
が、エクマンバージは構造上不向きなようです。
●漬漁業
柴漬け(枝葉の多い木の枝を束ねて水中に沈め、集まった小魚やエビ類をさで網などで受けてとります)。
●電気ショッカー
感電して浮いた魚をタモですくいます。
特に幅の狭い河川や水路で威力を発揮します。
電流の強さや、パルス長、交流と直流で魚の反応や後遺症が違います。
通電中に素手を水に入れると感電します(タモに入った魚を採ろうと思ってついやってしまいがちです)。
穴のあいた胴長は論外。
電極から遠くにいる魚は逃げてしまうようですので、必要に応じて網類の使用が効果的。
仔稚魚がたまっているところでやると、一発で全部殺してしまいます。あーあ、といっても無駄です。
カエルも浮きます。
当然、特別な許可が必要です。
●手づかみ
その気になれば結構とれるもんです。
●薬剤をまく方法、毒もみ
薬をまいて浮いた魚を拾います。許可が出ることはまずないでしょう。
【ひとだのみによる方法】−−−−−−−−−−−−−−−−−−
●漁協、市場で買う、もらう、拾う
サンプルを得ることのみが目的ならば、なにも自分で採る必要はありません。
●釣り人をめぐって買い取る、もらう
種類や数だけのデータが欲しいならば、びくをのぞかせてもらうだけで調査ができます。