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2009年04月11日

猛禽調査-おおざっぱにはこんな感じ

 一口に猛禽調査といっても様々な形がありますが、調査の仕事として最も多いのは、定点調査でしょう。
 その内容をごく簡単にご紹介。
 ちらりとかかわった程度の経験から書いてますので、詳しい話を補足していただける方が現れると嬉しいです。

 ちなみに、ここでいう猛禽調査の調査対象は、イヌワシ、クマタカ、オオタカ、サシバ、ハチクマ、ハヤブサ等といった希少猛禽であり、トビは含まれません。ノスリやチョウゲンボウは地域や場合によって含まれたり含まれなかったり。

 定点調査の多くは、道路やダム建設が計画されている地域に、希少猛禽類の出現が認められるかどうかを確認するところから始まります。
 つまり、一定の場所に決められた時間はりついて、見通せる範囲に調査対象種のタカが飛ぶのを延々待ち続けることになります。
 と書くと、極めて悠長で気楽そうですが、実際にはそうでもありません。
 肉眼で見えなくても、双眼鏡やプロミナ、フィールドスコープを目にあてれば見える場合も当然ありますし、逆にそれらの機材をつかうと視野が狭くなるので、肉眼で見えるはずのものが視野外を飛んでも気付かない、なんてことになってしまいます。なので、ただぼうっと空を眺めていればいいなんてはずはありません。

 また、空をバックに飛ぶ鳥はだれでも見えますが、山が背景になっていると気付きずらく、たとえその存在を確認できても種類までは見分けにくかったりします。
 とはいえ、よく訓練された調査員ならば、山バックであろうと、たいていタカが飛べばすぐ見つけますし、優秀な猛禽調査員は頭の上や後ろにも目がついていますので、背後や頭上を飛んでも即座にキャッチします。プロはやはりプロです。

 が、林内を移動する個体についてはなかなか見えるものではありませんし、短い距離の飛翔についても気付けないことが多くなります。ですので、ふと見たらいつのまにかタカが木にとまっていた、なんてこともあり得ます。なので、とまりそうな木や鉄塔、電柱などの頻繁なチェックはかかせません。
 その他、紛らわしい鳥がしょっちゅう飛ぶとか、タカ以外の鳥の確認を記録する必要があるとか、細々とした面倒なことが、だらだらだらだらと続いたりします。
 いつ鳥が飛ぶかなんてことはわからないので、弁当を食べるときもそれが休憩時間というわけではありません。以前は、弁当は下を向かずに食べられるおにぎり限定!とまでいわれることもあったようですが、実際、カップラーメンを食べながらよりは、おにぎりを食べながらの方が、突然のタカの飛翔の発見と対応はずっとしやすいです。
 そりゃそうですね。当然です。
 でも、笑っちゃうほど寒い日に、野外で食べるラーメンの魅力は相当なもんがあります。ラーメンを食べるために調査をするんだ! なんて思うほど。

 現在、大多数の定点調査は一定点一人になってます。
 誰からも見えないところで一人で孤独に観察を続けるわけです。
 そして、タカの飛翔なんて、渡りの季節を除けば、一日調査して一度も見られないこともないわけじゃありません。
 ということは、さぼり放題ともいえます。

 が、それはわりと困難です。
 他の定点から無線が入るからです。
「今オオタカがそっちへ向かったんでよろしく」とか、「尾根上のマツにとまったようだけれど、そっちから見えないか?」とか。
「今、そこの真上にいるんだけど見えない?・・・・・・こっちからだと左翼がデコボコして見えるけど、欠損ある?」
とか。

 まあ、そんな無線が入らなくても、そのうち書くつもりのとある事情があるので、さぼろうとする人なんていないでしょうが。

 ってことで、これをたいへんな仕事と見るか、お気楽な仕事とみるか。
 どうなんでしょうね。
 実際、調査中の調査員さんたちを見ると、緊張感でピリピリしてる人もいれば、でろんとしている人もいるしで、よくわかりません。このへんはまあ、経験とか要領の問題も関係するでしょうが、再現不能な一回限りの調査観察全般の基本姿勢として、適度にリラックスしていないと、いいデータを冷静にとれないということはあると思います。特にこれは、基本、長丁場ですし。

 そんなこんなで、対象種を確認したら各種データを記録するという作業を8時間とか12時間、または夜明けから日暮れまでといった長時間、一カ所にとどまって延々こなすのが、定点調査の仕事になります。
 決められた時間になって調査開始したとき、あたりがまだ真っ暗だったり、濃い霧で数メートル先も見えないという状況であっても、それは関係ありません。書類上きちんと定められた業務ですので、見えるはずがなくとも、観察していたという事実が重要です。

 というわけでこの猛禽調査、タカを見るのが大好きな人にはこの上なく楽しい仕事かもしれませんが、野外での仕事だけあって、アウトドアならではの様々な苦労もあります。
 たとえば・・・・暑い、寒い、死ぬ程暑い、死ぬ程寒い、花粉が舞う、くしゃみが出る、犬が吠える、近寄って来た近所のおしゃべり好きなおじさんの話がとまらない、風がふく、荷物が飛ぶ、三脚が倒れる、三脚を人に倒される、なにかの弾みで三脚を自分で倒す、記録用紙が濡れる、ペンのインクが出ない、日に焼ける、尿意を催す、便意を催す、手がかじかむ、息が凍る、いろいろ凍る、ハチが来る、犬のフンがある、クマの気配がする、クマが出る、のぞきと間違えられる、無線が聞き取れない、無線の相手の話がわけわからない、腕章をしてても「結構なご趣味で」といわれる、おじいさんおばあさんおじさんおばさんこわもてのおにいさん&近所のガキは近寄ってくるがおねいさんは絶対こない、雨が降る、雪が降る、霧にまかれる、雹が降る、雷が落ちる、おしっこしたい、うんこしたい、もれるもれる、などなど。
 さすがに土砂降りのときは車の中で待機、ということになりますが、だだっぴろい田んぼの中の定点に車無しで置いていかれた場合、迎えがこなければその場でどうにかするしかありません。
 そうそう、寒さに関しては、気温よりも風の強さの方が重要です。なめてかかるとひどい目にあいます。

 ずらずら書いてしまいましたが、猛禽調査にとりあえず必要だと思うのは、
・必要水準以上の性能を持った機材を使用しそれを使いこなせること ・地図が読めること ・猛禽に関する十分な知識があること ・場数を踏み、場慣れしていること ・言語明瞭であること ・文章力があること ・きれいに記録を書けること
 といったところあたりでしょうか。

 機材、特に光学機器の善し悪しは、絶対的に見え方を左右します。ケチって買った安物はまずダメです。雲台の質が悪ければ、刻々と位置を変える飛翔中の鳥を追いそこねます。それと、フィールドスコープの視野の中心で目標を瞬時にとらえるのは、初心者にはまず無理でしょう。腕も必要になります。
 地図が読めなければ話になりませんし、付け焼き刃の知識では瞬時の判断ができずデータをとりそこねます。光の加減で様々な見え方をする鳥を識別するのはなんといっても場数ですし、場慣れし落ち着いて観察できなければ、秒単位の場合もある観察時間の中で確実なデータをとるのは困難です。また、無線で的確な意思の疎通ができないと他の定点との連携がとれません。観察データを的確な文章で表現できなければ、とりまとめをする人が困りますし、そのデータは現場での手書きとなりますので、きれいに書けないと、あとでわけがわからないということになります。

 ざくっとまとめるならば、猛禽調査に必要なのは、経験とコミニュケーション能力、そして、機材ということになると思います。

 ということで、傍からみれば、きっと奇妙な仕事にみえるに違いない猛禽調査。そんな調査でいったいどんなデータをとり、それがどんなふうに使われるのかについては、別エントリで。

posted by biobio at 01:29 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 動物調査の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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