「土と水を考える」
http://soilandwater.blog.so-net.ne.jp/
調査で森に入っているとき、地面の中の構造や地中の水の動きがわかればもっとこの森を理解できるのに、なんて思いながらも、耳慣れない単語だらけの専門書を開くのを躊躇している人には、勉強するとっかかりとしてとてもいいと思います。
私的な日記記事も混在するブログ形式ですので当然専門書籍とは得られるものが異なりますが、その分野の基礎的な知識と共に調査の実例やノウハウにも触れることができ、ここらで一丁この分野も系統だって勉強してみっか、という気にさせてくれます。専門用語の説明なども非常に丁寧です。
環境アセス等に関わる生物調査は、調査対象となる地域の生態系をいかに深く把握できるかで、調査結果としてのアウトプットの質が変わってくるものと思いますが、現実的には仕様書やマニュアルにそった作業をこなし、決まりきった項目毎にデータを羅列して終わりということになりがちです。もちろん羅列だけでなく解析を行った結果も付け加えるわけですが、細かく使途の決まった予算内の作業から見えてくる結果は大方予想の範囲内でしょうし、結論や提言に定型句の使い回し以上のことを言っても依頼者に迷惑がられるだけだったりするでしょう。
とはいえ、魂の抜けきったコンサル屋でもない限り、出来ることならもっと深く自然を理解したいと思うのが、現場に通う調査者の心情というものだろうと思います。となるとやはり隣接分野の理解はかかせないものと思いますし、「生態系」という言葉を出すならば、この「土と水」などは「隣接」でなく、そのものズバリ、必要不可欠な知識にまります。
ところで、隣接分野の知識を得るという目的からすれば、他にも土壌や水文に関する知識欲を満たしてくれるサイトは数あると思います。書籍並みに中身が設計されているものもあるでしょう。なのに、なぜこのブログ「土と水を考える」を紹介するのかということなんですが、実はこのブログ、とても希少価値があるものだと思うからです。
土壌土質水文関連の調査業界も生物調査業界と同じく閉鎖的であることは容易に想像できます。景気(≒税収)と連動して動く小さなパイを取り合う業界、と大まかにくくってしてしまえば、なんらかわるところはないからです。そんな閉塞性に覆われた中では、どの会社も調査に関わるささいな情報でさえ出したがらなくなります。実際の調査のノウハウをオープンしているところなど、さっぱりみかけません。内輪では当たり前の事柄であっても、共有財産という見方は悪なのかもしれません。
と考えますと、この「土と水を考える」から感じる真摯なトーンは、業界の閉塞感を打ち破るチャレンジ精神の静かな現れという気がします。