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2008年11月27日

「モニタリングサイト1000」について 2

 続きです。      【1】 【2】 【3】 【4】  【Top】 
 まあ、モニタリングサイト1000は研究でなく調査ですし、調査員の力量という問題もあるにしても、一度決めたらある程度の妥協は覚悟でそれでいくしかないということになったのでしょう。 調査項目を欲張らず、調査方法をマニュアル化して統一することは、100年間続けさせるという目的のためにはベストとはいわなくともベターな方法だと思います。
 が、1000もの定点を設置して行うとなると、捨てるには惜しい規格外のデータ、ひょっとしたらその土地の環境を評価する上で最も重要となるかもしれないデータがたくさんあがってきそうです。
 データベースの設計にもからむ話だと思いますので、このへんはちと気になりますし、実はこういったところにこそ一番の収穫があるのかもしれないぞ、とも思います。
 もうひとつ、これだけの場所で調査を行えば、これまで分布しないとされていた場所で見つかる種も多く出てくると思います。が、それをデータの形にすることは、同定能力の問題以上に、報告する勇気やその道の権威の先生との関係という問題がからまりそうです。ま、この話は脇にどけておいた方がいいですか。

 それはそうと、もし、このモニタリング1000の調査を全てそれなりの力量のある民間の調査会社に委託して行った場合、その費用はどの程度になるのでしょうね。ボランティアに対しての説明会や講習会、そしてフォローにはそれなりの費用がかかると思いますが、それら込み込みでどの程度の違いが出てくるのか知りたいと思います。安くあげることを一番の目的としているわけでもないでしょうから興味本位の話ですが。

 ともあれ、100年間現在の出発点の状況を死守すべきか、適当なところで今後の方向性を吟味すべきかなんて議論はいずれ行わなければいけなくなるでしょう。が、少なくともこのモニタリングサイト1000により、現時点で日本の環境についての長期モニタリングの体制がひとつ整ったということではあるはずです。
 環境問題に関しちゃもっと他に優先的にやるべきことがあるだろう、という意見も当然あるでしょうが、それがきちんと議論されるためにも、こういった具体的な動きは注目すべきことと思います。

 ということで、動き始めた以上、あとは、いかにそのデータを生かすかということですね。
 データベースが整うわけですから、特定の生物が増えたとか減ったとかでマスコミといっしょに一喜一憂する楽しみにはことかかなくなるわけですが、肝腎なのは、その理由を探ることであり、さてそれで、から続く部分です。
 種や分類群毎のマニアや専門家はたくさんいても、環境を読める人材なんてそう多くいるわけではありませんし、見いだされた問題に対して効果的な対策を打ち出そうという話になった場合、国際的な問題や国内省庁の壁、多方面の利権なんてものもからんだ政治の話にもなってきますから難しそうです。
 そこまでの話にならないとしても、データがあるが故に、安易な増殖策や移植放流、駆除活動の根拠に使われて、かえってとりかえしのつかないひどい結果を招くことになってもバカらしいですから、データを読み、環境を読み、因果関係を分析してより確からしい説明を常に追い求め、様々なリスクをきちんと評価するという作業は必要不可欠でしょう。複雑極まりない生態系を相手にした話ですので、意見・見解がわかれるなんてことも当然あると思いますが、少なくとも議論の透明性を確保して欲しいもんです。また、誰しもが発言には責任をもつべきと思いますが、結果に対して「責任」なんて言葉を安直に持ち出して、責任のなすりつけ合いという消耗戦に持ち込んでもいいことはないと思います。
 んで、問題が見いだされたときの対策を事業化するならば、相手が不確実性の高い自然であるという事情を前提としたフレキシブルなフォロー体制が必要でしょう。もし、「そのままほっとけ」というのが一番よさそうならば、対策事業費としてついた予算を返すことも必要かもしれません。行政担当者としてそんなのは到底考えられないことかもしれませんが、今の日本は様々な意味で考えられないような状況にあるわけですから、この手の考えられないことを少しばかりしても国民は目くじらをたてないと思います。むしろ無駄金節約ということで歓迎でしょう。

まだ続いてしまいます。

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posted by biobio at 09:43 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 各種調査の話題 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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