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2008年07月18日

調査は誰がするのか-元請け、下請けの話

調査の仕事が発生する大まかな流れは、ここに書きましたが、その過程で生じるへんてこなことについていくつか。

 調査の業務が入札制になっているばあい、入札参加資格のあるコンサル等が入札、受注して調査が始まるわけですが、実際のところ、受注したコンサルはマネージメントに徹し、調査そのものは調査会社等に外注することが多いようです。データを出すことのみを外注する場合もあれば、報告書からなにから全てまかせる丸投げも ふつうにあります。で、外注された下請けの調査会社もまた、事情によりけりで他の会社に投げたりします。
 こうなりますと、複数年続く調査の初年度はAコンサル、翌年度はBコンサルが受注したとしても、実際の調査は同じ下請け/孫請けの調査会社や同じ調査員が行っていたなんてことが往々にしてあり得るわけです。
 現実的な話、生物調査は誰が調査したかに結果が左右されがちです。能力の違いはもとより、この山の西斜面のこの杉の木は鳥がよくとまるので要チェック、とか、この川はここらあたりの流れが危険だとかの、報告書に現れない情報がものをいいます。植物調査なども、歩いたことのある山かどうかで、作業効率だけでなく確認できる種類にも差が出てきてしまうかもしれません。対象とした動物の個体識別が必要な調査に至っては、調査者が調査対象と接した回数、つまり経験回数以外に精度をあげるのは困難でしょうし、場合によっては調査対象(動物)の方が調査者(人)を識別し、それが調査上不可欠な経過になるかもしれません(知っている顔ならそばにいても気にしないが、知らない顔の人間が近づくと威嚇や攻撃行動を始めるとか)。
 種類が多く種の同定の難しい昆虫類などでは、出現した種が調査者の得意分野かどうかでかなり結果に差異があらわれる可能性があります。通常レベルの技術を持つある人が「○○属 sp.(○○属の何かの種の意味。即ち、属はわかるが種まで落とすことは不能だったなにがしかの種)」と同定して計数したものを、その分野が得意な別な調査者は、その属の中に複数種いることを確認してそれぞれ別々にカウントするかもしれません。こうなってくると、種類別の個体数から算出される「多様性の指数」なども、単純には比較できない数値ということになってしまいます。
 なんにしても、毎回毎回初めて現場に入った調査者の出したそれぞれ別々の結果よりも、複数回にわたって同じ調査員が現場に入って出したデータの方が、質的に安定し、各回の結果を直接比較しやすいデータになっているとみていいでしょう。同じ建設業関連の仕事とはいっても、他の業種と質的に異なる生物調査ならではの技術の問題があるわけです。
 このことは、実際の調査にあたる下請けの調査会社からしてみれば、安定した品質のデータを出すにはどこのコンサルが元請けになろうとどうでもいいということになります。入札時に入念にチェックされたはずの入札参加業者の技術力なんてものは、実はどうでもいいものだったということですね、
 もちろん、入札には技術力以上に価格がものをいうわけですが、ちょっと極端な言い方をすると、事業費の多くは元請け会社の社員を養うためにつかわれます。で、下請けにはそのあまりがまわってくるだけの話ですので、下請けにしてみればその価格で仕事を受けるか受けないかだけの話です。
 となると、実際に調査にあたってきた調査会社に直接発注できれば品質維持の確実性からいっても経費の節約からいってもずっといいわけですが、それはそれで難しい事情があります。調査会社の多くは専門分野が特化していますし(つまり、多分野にわたる総合的な調査には外注しないかぎり対応できない)、そもそも入札参加資格(技術士等の有資格者の人数や過去の実績などなど)も満たすのが困難です。だからこそ、元請けとなったコンサル等からの仕事を請け負っているわけです。マネージャーと実働部隊のような関係といえばいいでしょうか。
 マネージャーが必要な仕事ばかりでもないでしょうが、現実はこんな感じ。

 またこのことは、その業務について全く技術をもたない業者であっても、技術士の人数などの要件を満たせば、価格しだいで落札できてしまう可能性があることを意味します。ある業者が猛禽調査を落札したはいいけれど、それがどんな調査かさっぱりわからないため人づてで自分に問い合わせてきた、というフリーの猛禽調査員の話を聞いたことがあります。
#この業者の場合、価格でなく天の声で落札してしまったのかもしれませんが。

 ついでに、こんな話もききました。

 とある河川のモニタリング調査業務。
 A社はその業務を数年にわたって直受けでやってきました。ところが、役所側で特定の業者に発注し続けるのは癒着を疑われるためにまずいということで、ある年からB社がその仕事を元請けとして受注することになりました。ところがB社はその業務を遂行する技術や設備がないのでA社に外注しました。
 ということで、A社はずっと同じ仕事を続けるだけのことであるにもかかわらず、その年を境に、何年か後にやってくるであろう直受け復活の日を待ちながら、B社を養うための費用をさっ引いた金額でもってしばらく我慢しつづけることになったわけです。
 とはいえ、A社はそれでもやっていけるわけですから、もともとの予算額の意味とか、マネージャーの役割ってのは、いったいなんだったんでしょうね、という話。
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