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2008年06月13日

報告書作成について−厚さの問題

 ワトソンとクリックは、わずか900語の論文で世界を変えることとなりました。DNAの立体構造に関する『Nature』の論文です。
Watson J.D. and Crick F.H.C. : Molecular structure of Nucleic acids. Nature 171, 737-738 (1953)
 科学論文は、最も大切なその理論のエッセンスが確実に伝わるよう、無駄をそぎ落とし、可能な限りシェイプアップします。違う意味にとられてしまうことなく、あいまいさを排除するよう、言葉や言い回しも慎重に選択します。短さはエレガントな理論の証といっていいでしょう。長い論文は、長いという理由だけでダメという研究者もいます。

 その対極にあるのは、環境コンサルタント会社がお客さんの要請に従って作成する報告書です。
 この手の報告書で最も重要なことは、縦に立つかどうかということにあります。
 横幅(厚さ)が高さ(普通A4サイズですので約30cm)を超えるかどうかにしか関心のないお客さんも少なくないようです。
 お客さんとは、多くが役所の担当者のことです。

 なお、厚い方がいいいとはいえ、文字が多い報告書は嫌われます。証拠写真、試料写真はたくさんあるほどよく、概念図のような絵も好かれます。表には異常な関心をよせるので数字のミスは厳禁。

#とはいえ、一部のろくでもない役人以外は、本当は報告書の厚さなどたいして気にしていないのかもしれません。論文でなく調査報告書なのですから、仕様書に従ってデータをあつめればそれなりの量になるのは当然のこと、予算額の大きい仕事であればあるほど単純に厚くなるというだけの話です。
 が、権力を持ち高圧的な態度の場合が多いお客さんに対し、継続的に仕事を受注したいコンサルさんのサービスによる先回りがエスカレートしてしまった結果、むやみやたらと厚さを求めることになったという面はありそうです。厚さを喜ぶ役人が少なからずいるからという理由にかわりはないわけですが。


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